誕生日の願い事

「誕生日に欲しいもの?」
 キラの問いかけに、周囲の者たちが大きく首を縦に振ってみせる。
「そう。カガリさんにも聞いたから、キラにも聞いておこうと思って」
 お祝いして上げるから……とミリアリアがふわりと微笑んだ。
「……ちなみに、カガリは何て言ったの?」
 参考までに教えて……とキラは口にする。その瞬間、その場に一緒にいたアストレイ三人娘が視線を泳がせたのはどうしてなのだろうか。
「何か、凄いことを言ったみたいだね……ひょっとして、自分専用のストライクとでも言った?」
 キラはまさか、と思いながらもこう口にする。その瞬間、全員の口元に引きつった笑いが浮かんだことから、それが正解だったのか……とキラは判断をした。と言うことは、自分が少々突飛なことを口にしても大丈夫だろうとも思う。
「だったら、僕はアスランが欲しいかな」
 と言うことで、こんなセリフを口にしてみる。
「キ、キラぁ?」
「……ど、ういう意味で言っているのか、聞いてもかまわねぇ?」
 ミリアリアだけではなく、普段はキラが何を言っても平然としているはずのディアッカまでもが言葉を詰まらせながらこう聞いてきた。
「だって、便利だよ。ご飯は作ってくれるし、部屋も片づけてくれるし、遊んでくれるから」
 そんな彼に、キラはさらりとこう言ってみせる。
「……それって……ようするに、面倒を見て欲しいって事か……」
 別の意味だったらどうしようかと思っていた……とサイが口にした。
「何を考えているのかなぁ、サイ?」
 にっこりと微笑みながら、キラは問いかける。
「……まぁ……そう言うこと、かな?」
 あはははは……と今までとは違った意味でサイが笑いを漏らす。
「まぁ、いいけどね。それに、こういう状況だから、無理しなくていいよ。気持ちだけで嬉しいから」
 それよりも、ゆっくりと休んで欲しい……と言いながら、キラは立ち上がる。
「キラ?」
「そろそろ行かないと……バルトフェルドさんに呼び出されているんだよね」
 どうせ、ラクス達のことに決まっているけど……とキラはサイ達に苦笑を返した。
「……ご苦労さん……」
「がんばってきてくれ」
 この言葉を背に、キラは既に談話室代わりに使われているアークエンジェルの食堂を後にする。
「そう言えば、誕生日だったんだよね」
 去年は、こんなところで誕生日を迎えるとは思っても見なかった。キラは心の中でこう呟く。
「……誰も死なないでいてくれると一番いいんだけどな」
 それが一番のプレゼントだ……とキラは呟いた。

「俺が欲しいんだって?」
 ようやく部屋に戻って一休みできるかも……とキラが思ったときだった。アスランが訪ねてきたのは。それはかまわないが、どうしていきなりこんなセリフを言われたんだろう……とキラは思う。
「だって……さ」
「まさかと思って来てみれば……どうしたんだ、この部屋の惨状は?」
 そう言われても仕方がない、とキラは苦笑を浮かべる。室内には書類やディスク、それにパソコンがあちらこちらに積み上げられているのだ。
「アストレイがね……さすがにパイロットの熟練不足でやばい状況だから……少しでも何とか出来ないかと思って……」
 それにストライクやバスターのOSも何とかしたかったし……他にもあれこれ頼まれていたから……とキラは言葉を返す。
「お前、あれこれ背負いすぎ」
 何でも自分でしようとするな、とアスランは口にしてくる。
「わかっているんだけど……みんなに死んで欲しくないから……」
「それもわかっている。だから、俺が側にいるんだろう?」
 だから、少しは頼れ……と言いながら、アスランの腕がキラを抱きしめてきた。
「アスランには、頼るより甘えたいかな?」
 自分よりも五ヶ月も遅く生まれたはずなのに、どうして彼の胸はこんなに簡単に自分を受け止めてくれるのだろうか、とキラは思う。でも、それだからこそこうして甘えられるのだが……とも。
「考えてみれば、アスランはもうもらえないかも」
 くすりっと笑いながらキラはこんなセリフを口にした。
「そうだね。俺はもう、キラのものだからな」
 こう言い返すと、アスランは顔を傾けてくる。それがどういう意図を持っての行動なのか、キラにはわかっていた。だから、静かに目を閉じる。
 次の瞬間、二人の唇が重なった……




04.06.06 up



キラ、お誕生日ネタです。
5月のインテ及び、通販用のペーパーの小話でした。こちらのアスランは幸せですかね(^_^;