あの戦争が終了して初めての新しい年の幕開け。
 この日は皆ですごそう……と、あの日々を支えあい、戦い抜いた者達で約束していたのだが……
「キラが行方不明?」
 アスランの口から出たのはこんなセリフだった。もっとも、それはある意味予想されていた事態だ、と言ってもいい。だが、それをさせたくなくて、誰もがキラを一人にしないよう気を配っていたはずなのだ。それなのになぜ、とアスランは思う。
「悪い」
 こう言ってきたのはディアッカだった。
「ほら、一昨日、単発のテロがあっただろう? あれの後始末であいつも俺たちも走り回っていただろう。事態が収集したところまでは確認していたんだが……」
 その後の誰もが気を抜いた一瞬、キラは姿を消したのだと言う。
「あいつは……」
 妙なところで真面目だから……
 アスランはため息とともにこう呟く。逃げ出すなら、事態の最中の方が簡単だろうに……わざわざ最後まで見届けてから姿を消すとは……とアスランは苦笑を浮かべた。
「アスラン?」
 そんな彼の表情に、ディアッカが不審そうなまなざしを向けてきた。
「ばれれば俺たちが追いかけていく、ということはあいつもわかっているはずだ。だから、一時的に一人になりたいとあいつは思ったんだろうし、誰かあいつに協力した人間が身近にいるということだ」
 だからといって許せることじゃないけどな、とアスランは付け加える。
「なるほどな」
 言われてみればそうか、とディアッカも頷く。考えてみれば、最近のキラは四六時中だれかに監視されていたようなものだ。息抜きをしたくなったとしても無理はないだろう。
気持ちはわかるが、ミリィを心配させたことに関してはきっちりと反省してもらおう、とディアッカも笑う。
 そうして、二人は行動を開始したのだが……犯人はあっさりと判明してしまった。
「あぁ、少年にシャトルを貸したのは僕だよ」
 けろりっとした口調でこう言ったのはバルトフェルドだった。
「亡くなった友人達に会いに行きたいと言われたのでね。必ず戻ってくることを条件に、ジュール家の子息と一緒に送り出したが?」
 いけなかったか? と逆に聞き返してきた彼に二人は言葉を失う。まさかキラとイザークが一緒だとは思わなかったのだ。と言うべきか、彼の不在に気づかなかったと言うべきか……
 あの人にだけはかなわない
 ただ、これだけは二人に共通した思いだった。
「無事に戻ってくりゃいいんだが……」
 あの組み合わせで……とディアッカが付け加えた言葉がアスランも気掛かりだった。

 そのころ、キラとイザークはあの最後の戦いがあった宙域にいた。
「何故……」
 イザークが呟くように問いかけてくる。
「皆、大切な人のために戦った。そんな人達に、今世界が、生き残った人たちがどうなっているのか、報告をするのが生きている人間の義務かなって思っただけだよ」
 僕も彼らのことを忘れたくなかったし、とキラは付け加える。
「お前は……」
 そんなキラにイザークは複雑な視線を投げつける。
「何?」
 そんな彼にキラは微笑みを返した。
「あいつらの、あの行動の意味が理解できた、と言うだけだ」
 確かに目が放せんと、イザークはため息とともに吐き出す。
「そんなこと……」
「他人に好意を向けるだけではなく、他人の好意も素直に受け止めるんだな」
 キラの言葉を途中で遮ると、イザークはこう言った。
「それよりも、さっさと終わらせろ。そろそろばれているころだ。あいつらがエターナルなんかで迎えに来る前に戻るぞ」
 いくらなんでもそこまでは……とキラは言いかけてやめた。ラクスはともかく、アスランカガリはやりかねないと思ったのだ。
「本当に……」
 彼らは変わらない、とキラは思う。途中、多少の気持ちのすれ違いはあったとはいえ、基本は変わらないのだ、と。
 だから、人々はいつかきっと分かり合えるのだと……
 そう考えているキラの瞳に新しい年を照らそうとする、陽の光が映った。



04.01.01 up
コミケ三日目の一般列でちまちまメールを打ち込んでいた小説です(^_^;
何か違う話にななったような気も(^_^;(^_^;