再会自分の力が足りなかったせいだろうか。 それとも、他の要因からなのか。 結論から言えば、アーク・エンジェルはザフト軍の手に落ちてしまった。もちろん、ストライクも同様だ。 そして、自分は……と言えば、他の友人達から引き離されて、一人、この部屋に閉じこめられている。 「まぁ、当然なんだろうな」 他のメンバーと違って自分はコーディネーターだ。同じコーディネーターであるザフト軍からすれば、さらに監視を強める必要性を感じているのだろう。 「それに、僕は彼らから見れば裏切り者なんだろうし」 未だに、あの時言われた言葉が脳裏から消え去らない。そして、フレイのまなざしも。 同時に、今の状況にどこかほっとしているのもまた事実だ。 これから自分がどうなるのかわからない。 だが、一つだけわかっていることがあった。 「でも、もうアスランとは戦わなくていいんだよね……」 それだけは間違いはないだろう。 あのつらさをもう二度と味あわなくていいだけでも気持ちは楽になる。それがまた罪悪感を煽ってくれるのだが、それ以上にアスランと戦わなくていいという気持ちの方が強い……というのはどこか壊れているからなのだろうか。 「……とっくの昔に、僕はおかしくなっているのかもしれないけどね……」 人を殺すことに対する罪悪感が減ってきているような気がする。そんな自分が、まともだとはとても思えない。 自分でも、何をしているのかわからなくなるときがあった。 そして、あのまま戦いの中に身を置いていれば、さらにそれがひどくなったのではないだろうか。あるいは、周囲の人間が誰かすらわからなくなっていたかもしれない。 それとも、その前に誰かの手にかかっていただろうか。 その方がよかったのかもしれないな……これ以上、おかしくなるくらいなら。 「いっそ、あの時に殺されてたらよかったのかも」 アスランと再会をしたあの瞬間に死んでいれば、おそらくストライクに乗ることもなかっただろう。そして、戦いを繰り返すことも……アスランの心の中にも、おそらく月面で分かれたときのままのイメージで残っていたはずだ。 でも今は…… それを確かめる勇気は自分にはない。 そもそも、彼と顔を合わす勇気すら今の自分の中にはないのだ。 「……でも、それも無理な願いなんだろうな……」 堅くロックされているはずのドアの向こうから人の気配が伝わってくる。 部屋の中に足を踏み入れることをためらっているその気配が誰のものか、確認しなくてもわかるような気がするのはどうしてなのだろうか。 「アスラン……」 思わずそう呟いた瞬間、ドアのロックが外される音がする。 ゆっくりと視線を向ければ、そこには予想通りの姿があった。 「君が……僕を殺してくれるの?」 知らず知らずのうちに微笑みが口元に浮かぶ。それはそれで幸せかもしれない……とすら思える。 「……キラ……」 その瞬間、アスランが辛そうに顔をしかめた。その表情のまま、まっすぐに歩み寄ってくる。だが、お互いの腕が触れ合う寸前で、彼の歩みは止まってしまう。 「アスラン」 いったいどうしたのだろうと思いつつ彼の名を口にした。次の瞬間、僕はアスランの腕の中に抱きしめられる。 「せっかく、こうして抱きしめられるのに……どうして、君は……」 頬に濡れた感触が伝わってきた。 これって…… 「頼むから、そんな悲しいことを言わないでくれ……守るから。俺が守るから……」 おかしいよね。昔からなくのは僕の方で、君は慰めてくれる立場だったのに。 「……ごめん……」 そっと彼の背に腕を回せば、さらに強く抱きしめられる。そのまま、僕らはどうすることもできずにただお互いのぬくもりだけを感じていた…… 終
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