「……どう、しましょうね、これは……」
 目の前の光景に、光明は思わずため息をついてしまう。
 周囲におやつや空き缶――ジュースだけではなくビールや酎ハイまである――をまき散らした中で悟浄と悟空が眠っていた。
 悟浄はともかく、悟空の頬が赤いのは、アルコールを摂取したからだろうか。
「まったく……」
 三蔵は三蔵で、呆れたような視線を向けた。
「きちんと、悟空の面倒を見ていろって言ったのによ」
 同レベルで遊べ、とは言っていないだろう……とさらにため息をつく。
「しかも、これじゃ風呂に入っていないな、悟空は……歯も磨いてなさそうだし……」
 たたき起こして、きちんとさせないと……といいながら、三蔵は悟空へと歩み寄っていく。
「本当に、いいお兄ちゃんですね、貴方は」
 悟空に限定されるようだが、と光明がからかうように口にする。
「別に……」
 素っ気ない素振りを作りながらも、三蔵はこう言い返す。だが、内心では、嬉しかった。
「……悟空、起きろ……」
 それよりも、今はこちらの方を優先しよう。こう思いながら、三蔵は悟空の体を揺り起こす。
「悟空!」
 ほら、起きろ……と言いながら、少し強めに揺すれば、特徴的な黄金がまぶたの下から現れた。
「……さんぞ?」
 そして、まだ眠気が色濃く滲んでいる声でこう問いかけてくる。
「おかえり……」
 だが笑顔でこう言ってくるのは反則ではないか、と三蔵は思う。これでは怒れないだろうと。
 それをわかっているのかいないのか。悟空はこつん、と三蔵の胸に小さな頭を預けてくる。
 そんな何気ない行動が、三蔵の中で厄介な感情を生み出す。
「……寝るなら、ちゃんと歯を磨いてから、部屋に行って寝ろ」
 それを悟空に悟られないためには、ため息と共にこういうのが精一杯だった。
「さんぞが、つれてって?」
 だが、その努力を無駄にしてくれるセリフを口にしてくれるのだ、このオコサマは。
「……テメェ、いったい、今、幾つだ!」
 本当に……と言いながら三蔵は悟空の体を抱き上げる。そして、そのまますたすたと歩き出した。
「三蔵」
 そんな彼の背中を光明の声が追いかけてくる。
「何でしょうか?」
 視線だけを彼に向けると、三蔵は聞き返す。
「わかっているとは思いますが、まだ、だめですからね?」