「う〜っ……」
 外に出られない、と言うことがこんなに苦痛だと思ったことはなかった。悟空は心の中で呟く。
 昔はあそこだけでも平気だったのに、と。
 だがそれ以上に苦痛だと言えるのは、三蔵の態度なのかもしれない。
 普段から、決して愛想が良いとはいえな三蔵だ。
 だが、このような天気の日は全身がとげとげしくなってしまう。それはまさしくこの前本で見た《ハリネズミ》のようだ、とまで思えるほどだ。
「う〜〜〜」
 それを間近で感じることははっきり言って苦痛としか言いようがない。
 そのせいだろうか。
 普段はうるさいほどに姿を現す僧達が、今日から朝から見かけない。だから、誰にも遠慮することなく三蔵の側にいられると、喜んでいたのだが……その気持ちも30分と経たないうちにしぼんでしまった。
「……うう〜〜〜っ」
 まさか、二人でいるのにこんなに寂しいと感じるなんて、あの頃は考えたこともなかった。二人でいれば、どんなときでも楽しいと思っていたのだ。
 それなのに……と悟空は盛大にため息をついてしまう。
「三蔵……」
 普段の彼であれば、ハリセンではり倒されようと何をしようとかまわずにまとわりつけるのだが、今日の彼では無理だ。
 こうして、同じ部屋にいることも、彼にとっては苦痛なのかもしれない。だが、悟空には他に行く場所はないし……そもそも、どんな態度を取られようと、時部は彼を見つめていたいのだ、と心の中で呟く。
「……本当……雨なんて、どうして降るんだろう」
 それが、自然の摂理であり、第一雨が降らなければあちらこちらで困る人がいると言うことも悟空にはわかっている。それでも、三蔵がこんな態度を見せるのであれば降らなくてもいいのに……とも思ってしまうのだ。
「これがさ、全部、飴だったら、思い切り嬉しいのに……」
 好きなだけ食えるのにさ……と付け加えた瞬間だ。今までなんの反応も示さなかった三蔵が、小さく吹き出しているのが見える。
 それだけでも幸せかな、っと思う悟空だった。


ちゃんちゃん

04.06.09