「なぁなぁ」
 こう言いながら、悟空が膝に懐いてくる。
「ウゼェぞ、馬鹿猿!」
 そんな悟空の頭を三蔵は遠慮なく張り飛ばす。しかし、そんな好意にも慣れてしまっているのか、当人は気にする様子を見せない。
「さんぞーってタレメなんだよな?」
 それどころか、けろっとした口調で地雷を踏みにじるようなセリフを口にしたのだ、この万年オコサマは。
「……何が言いたいんだ、テメェは……」
 怒りを隠しきれないという口調で三蔵が聞き返す。
「ンでもって、悟浄がつり目なんだよな?」
 しかし、三蔵のそんな態度もまた日常だと言っていい。そのせいか、まったく気にする様子を見せることなく、悟空はさらに言葉を重ねた。
「……それが、どうしたって言うんだ!」
 本気で何言いたいのかわからなくなってきた三蔵が悟空を睨み付ける。
「んで、俺がびっくり目なんだよな?」
 ようやく自分に注意を向けてくれたのが嬉しいのか、悟空は満面の笑みと共にこう口にした。その瞬間、三蔵はこれに関してさじを投げることにする。そして、視線だけで悟空の次の言葉を促した。
「じゃさ、八戒は何目なんだ?」
 ようやく、悟空の口から本題らしきものが飛び出す。
「はぁっ?」
 そのセリフに、三蔵の思考が停止する。
「調べてもわかんなかったんだよ。なぁ、知ってたら、教えてくれよ」
 悟空はさらに三蔵に向かって問いかけてきた。しかし、それに対する答えを三蔵は見つけられない。いや、他の誰も見つけられないのではないだろうか。
 沈黙だけが室内に満ちていった。




「上がり目、下がり目……と来たら……猫の目だろう」



ちゃんちゃん

04.04.06